銀行融資の基礎知識
銀行融資は資金調達法の代表格であり、ベンチャー企業から大企業まで規模に関係なく活用されています。
銀行融資にはまとまった融資を低金利で受けることができる、というメリットがあります。
決算やキャッシュフローなどを中心に厳しい審査が行われるのがネックですが、銀行融資を利用できる環境ならば、積極的に活用したいところです。
ただし、銀行融資を受けられるような黒字企業であっても、場面に応じてファクタリングを併用することもあります。
ファクタリングとの違いにも触れながら、銀行融資について説明いたします。
銀行は過去の実績を重視する
銀行融資を利用する場合、基本的に直近最低でも2期分の決算書を提出することになります。
銀行の行う審査は、将来の収益性よりも過去の実績を重視する傾向が強いです。
資金調達による仕入れや設備投資で収益を上げられることが明白でも、決算の数字が悪ければ審査には通りません。
そして当然ながら、決算を迎えていない創業1年目のベンチャー企業が銀行融資を受けるのは非常に難しいでしょう。
銀行融資は貸付条件が良い半面、審査のハードルが高いという難点があるのです。
税金対策としての側面
銀行融資を活用している企業は、審査に通りやすくするためにも決算の数字を良くして、経費などの数字を調整することがあります。
黒字決算で申告すれば、その分だけ税金の負担も増えます。
適切な利益で申告するのは良いことですが、経費を使うことを抑制して高い税金を払うのは効率の良い経営とは言えません。
ファクタリングは銀行融資に比べて手数料は高いですが、税金対策の側面もカバーしつつ資金調達できるという強みがあります。
借入残高とキャッシュフローを重視
銀行融資の審査では、既存の借入残高とキャッシュフローの状況が重視されます。
このことから、将来的に新たな資金調達が必要になる可能性があるのならば、敢えて銀行融資以外の方法を活用した方がいい場面も出てきます。
たとえば、運転資金がショートした時はファクタリングを活用し、設備投資やまとまった仕入れの必要な仕事を受注した時には銀行融資を活用する、といった使い分けなどです。
銀行融資は時間がかかる
基本的に審査はとても慎重に行われ、行内の複数部署で決済を得られないと融資実行には至りません。
申込内容と審査状況によっては資金調達するまで1ヶ月以上かかってしまうケースも珍しくないでしょう。
時間的な余裕があればよいのですが、緊急性の高い場面ではファクタリングの方が圧倒的に優れています。
銀行融資は時間がかかるだけではなく、待たされた結果融資不可になることも充分にありえます。
それは資金調達の可否で取引先を待たせるなど、多くの弊害を生むだけでなく、結果として時間を無駄にすることとなってしまいます。
「タイムイズマネー」という格言もあるように、銀行融資を検討する際は時間に対しての機会損失やライバル業者の動向なども踏まえて検討するべきです。
決裁権限
審査の基本的な流れを説明します。
- 企業から融資依頼を受けた担当行員は、提出された必要書類を分析し融資が可能であるのかを検討します。
- 見込みがあると判断したら、会社の将来性や展望なども踏まえ、融資を実行させるために説得力のある稟議書をまとめ、上司、そして本部の審査担当者へ回します。
- 引き継いだ審査担当者は提出書類や情報をさらに精査し、そこを通過したら審査部署の上役など、決裁権限のある者が融資可否の最終判断を下します。
各銀行や融資の内容によってフローに違いはありますが、大まかな流れとしてはこういった仕組みであると考えてよいでしょう。
仮に、審査の第一段階である支店などの担当行員とコネクションがあったとしても、この行員にはそもそも決裁権限はないので、融資の可否への影響はありません。
銀行の都合で融資を打ち切られる
バブル崩壊やリーマンショックの際は多くの企業が倒産しました。
不景気によって仕事量が減少した影響もありますが、倒産に追い込まれた企業の多くは銀行からの貸し剥がし(融資打ち切り)による打撃を受けています。
銀行は都合の良い時は擦り寄ってきて「お金を借りてくれ」と頼んできますが、景気の変動などで状況が悪くなった時はあっさり突き放してきます。
お金が必要になったら銀行融資で対処すれば良い、と安易に考える経営は非常にリスクが高いと言えます。
現在銀行融資を利用しているなら、無理して他の方法に切り替える必要はないかもしれません。
ただし、将来に渡って銀行が同じ対応を続けてくれる保証はないので、いつでも銀行融資以外の方法で資金調達できるように情報収集しておくことが大切です。
銀行の審査は近い将来、AI(人工知能)によって自動化される可能性もあります。
古い付き合いを持っていて優遇されている場合でも、AI化など与信システムの変更によって、突然対応が変わってしまう、といった可能性も考慮しておく必要があるでしょう。
銀行による「貸し剥がし」
貸し剥がしという言葉をご存知でしょうか?
1990年代初頭にバブルが崩壊し、日本は長い平成不況へと陥りました。
それまでの好景気には、銀行はとにかく誰彼構わず融資をしまくっていました。貸せば貸すほど儲かるからです。
街角の中小企業の玄関先で、銀行員が頭を下げて「お金を借りてください」と願い出ている場面をみかけたとしても、何ら違和感を覚えないような時代だったのです。
ところが、バブルが崩壊するとそれら貸付はたちまち巨額な不良債権へと変わり、銀行はそのツケの後始末に奔走することになりました。
「貸し剥がし」による強引な資金回収
巨額の不良債権を抱え深刻な状況へと陥った銀行は、自己資本比率を安定化させるために強引な資金回収に着手しました。
それまで積極的に融資を行っていた態度を一変させ、返済期限前にも関わらず融資している資金の一括返済を迫る、一方的に融資を減額するなどをしたのです。 これがいわゆる「貸し剥がし」です。
当時は、中小企業や業績の芳しくない大企業の多くが運転資金を銀行の融資で賄っていました。
銀行にとっても優良な顧客だったはずですが、こうした資金力の乏しい企業が真っ先に「貸し剥がし」のターゲットとされたのでした。
たとえ何の問題もなく返済を行っている企業であろうとも、それまで友好的な関係であっても、それは無慈悲に実行されました。
無情な貸し剥がしを受け資金繰りが困難になった企業は次々に倒産、さらにそこから連鎖倒産を引き起こし、黒字倒産も続発する事態へと発展してしました。
バブル崩壊直後、ただでさえ経営は苦しく運転資金の調達が必要な状況下で「貸し剥がし」とくれば、それは企業にとって死刑宣告をされたことに等しいでしょう。
今もある「貸し剥がし」
銀行が強行した「貸し剥がし」は大きな社会問題となました。
「倒産に次ぐ倒産」という悪夢のような状況を生んだこの連鎖は、平成という時代に暗い影をおとした要因のひとつと言っても過言ではないでしょう。
そして、銀行による貸し剥がしはバブル崩壊の混乱時以降、いまもなお行われています。
最近でもっとも多く頻発したのが、「サブプライムローン崩壊」「リーマンショック」の時でしょう。この混乱時、都市銀行・地方銀行問わず貸し剥がしが積極的に行われていました。
貸し剥がしを受けた企業はリファイナンスで危機を回避するしか手段がなく、債務の借り換えができなかった会社はことごとく倒産していきました。
このように、金融危機や金融事変があれば銀行は容赦なく「貸し剥がし」を行うのです。
決して過去の物になった訳ではなく、経営者であれば今後いつ自分が貸し剥がしの当事者になってもおかしくない、と言うことを認識しておきましょう。
また、金融庁では貸し剥がし・貸し渋りに関するホットラインを設けているので、相談窓口の存在についても認知しておきましょう。
融資とコネや人脈の関係
一般的に審査が厳しく、特に零細会社や中小企業にとっては実用的ではないとも言われる「銀行融資」。
利息年率が低いことは大きな魅力ですが、都市銀行からの融資ともなると、審査のハードルはかなり高くなっています。
審査には会社の財務状況を表した財務諸表をはじめ、今後の事業内容や返済計画を記した事業計画書や資金繰り表といった、会社の状況を丸裸にした書類の提出が必要で、これをベースに融資の可否の判断が下されます。
それだけではなく、納税状況や自己資本率、担保、経営者の素質など信用に関わるものは徹底的に調査されます。
しかしその一方で、「コネや人脈さえあれば審査は通る」と言った噂も耳にしたことがあるのではないでしょうか。
実際にコネクションさえあれば銀行融資を成功させることが可能なのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
コネと人脈とは?
銀行融資の可否に関わるようなコネや人脈とは、いったいどのようなものがあるのでしょうか。
いくら銀行の関係者と付き合いがあると言っても、新人社員や平社員との親交程度では、影響があるとはまず考えられません。
また、支店長以上の影響力を持った関係者とつながりがあるとしても、「知り合いの知り合い」や「お客さんの義理の兄弟」のように関係性が遠ければ、それは強力なコネとは言い難いでしょう。
コネ融資は存在するのか
前項で挙げた強いコネを実際に持っているとしましょう。
そして、会社の業績から考えると、銀行融資を受けるのは難しい状況だと仮定します。
結論を言うと、銀行融資は難しいです。一般論になりますが、コネや人脈で銀行融資の審査が有利なる事はありません。
まず原則として、銀行はコネによる融資を禁止しています。もちろん、審査に便宜を図ることを含めて、です。
そして審査決裁の仕組み上、コネクションが介入すること自体が困難とも言えます。
コシ・トラスト事件
コネによる融資はない、と結論付けましたが、過去には実際にコネ融資が行われていたこともありました。
2009年に起きた「コシ・トラスト事件」は、その代表的な例です。
三井住友銀行が新興不動産会社「コシ・トラスト」に巨額の融資金を騙し取られたこの事件。
三井住友銀行はコシグループに対してなんと総額612億円もの融資を行っていたようですが、このうちの約170億円が焦げ付いて回収不能になりました。
知名度もなく大手企業でもないコシ・トラストが、なぜメガバンクから巨額な融資を受けることができたのか?
それは銀行の紹介融資、つまりコネ融資を利用して現金を引き出したからだったのです。
知り合った三井住友の行員を高級クラブや風俗店で接待し、さらに家賃を肩代わりするなどして囲い込み、この行員と共謀して巨額の資金を引出したのです。
この詐欺事件をきっかけに、銀行ではコネ融資が全面的に禁止となりました。
被害額も多額だったため、銀行内でのチェック体制も厳しく強化され今日に至っています。
銀行との上手な付き合い方
前述した通り、 銀行は基本的に「コネ融資」をしません。
しかし銀行とうまく付き合っていくことには、融資以外の面でもあらゆるメリットがあります。
矛盾に聞こえるかもしれませんが、銀行とのコネや人脈は融資に好影響を与えます。
逆に付き合い方を間違っていると融資において不利になります。
これは決裁とは直接関係しない部分のことで、そこまでのプロセスにおいてのあらゆる面での話です。
「コネ」とは違う、銀行との上手な付き合い方を解説します。
銀行は民間の営利企業である
銀行の仕事は「お金を貸して儲けること」です。自分たちの利益のために動く営利企業なのです。
したがって金の匂いのする方に寄っていきます。
要するに儲けさせてくれそうな相手を好むということです。
ボランティアではないので利益にならないことは基本しません。
銀行の収入の主軸となっているのは金貸し業務です。
顧客から「預金」として集めたお金を、必要な人間に金利をつけて貸し付け、その利息と手数料で儲けています。
当然、少額よりも高い金額の貸付のほうが儲かります。
しかし、取扱い金額が高くなればリスクも増大するため、厳しい審査を行うのです。
「銀行は貸してくれない」というイメージがありますが、銀行の本音は「金を貸したい」のです。
消費者金融と違いですが、銀行は顧客からお金を預かることもしますし、保険や国債、為替、投資信託も取り扱います。
近年は経済の不安定や不景気により不良債権のリスクが高まっているため、金貸業務からこれらの別業務にウエイトを置いてきていますが、それでもやはり収益のメインは融資です。
これを踏まえて話をすると、銀行は貸し手であり有利な立場であることは間違いないのですが、そもそも貸さなければ商売が成り立たちません。
我々は「客」であり、銀行は「ホスト」であるということも少なくとも認識しておきましょう。
もちろんこれは、客なのだからと偉そうにすればいい、というわけではありません。
金策に困り融資を渇望するあまり下手に出過ぎると足元を見られるだけでなく、経営の緊迫性を過剰に印象づけてしまい銀行も融資に消極的になってしまうおそれがあります。
そうした状況であっても“銀行と最良のビジネスパートナー関係を築きたい”くらいの意識を持って接したほうがよいのです。
好かれることよりも、嫌われないことを意識
銀行と上手に付き合うための近道は、銀行に好かれる努力をするのではなく、嫌われないようにすることです。
銀行は相手をチェックする際、ネガティブな部分(リスク要因)を探ることに重点を置く傾向があります。
業績は良いのだが、素行や会社体質に問題があれば融資を躊躇します。銀行が嫌う会社のタイプをまとめてみました。
銀行が最も嫌うのが、顧客に嘘をつかれることです。
融資審査では嘘をついても必ずバレます。騙そうとしていた事実が判明すれば、いくら業績が良くても融資はおりません。
普段の付き合いの上で、たとえ小さなことでも嘘をつくことは禁物です。
友好的な関係において、ごまかしや見栄っ張りは不要です。
銀行との取引において重要なキーワードは「信用」です。
信用は積み重ねで得ていくものであり、長く付き合っていくことで優良顧客と認めてもらえるのです。
たとえ他行の金利が安いからといって、一方的に取引を切るようなことはしない方がよいでしょう。
また、「他社の方が安かったから~」などと値切る行為もあまりよくありません。
もし銀行側から聞かれたら「〇〇銀行から○%で打診を受けている」と正直に答えればよいでしょう。
困った時の資金調達でしか利用しない会社は、銀行にとっても“ただそれだけの顧客”という存在になってしまいます。
経営者の個人口座としても利用する、定期貯金を預けるなど日常的に付き合っていくことが大切です。
経営者や幹部に問題のある会社とは、たとえ銀行でなくても取引はしたくないものです。犯罪行為などはもってのほか。
態度がそもそも良くない、など会社経営以前に人間として問題のあるような人とは、銀行も関わりを持ちたがらないものです。
活気のない会社は業績も比例して元気のないケースが多いです。
意外に重視されているのが社員の電話対応のトーン。それだけでも会社の活性度が見えてくるとのことです。
なるべく良好な関係を
銀行と良好な関係を築き、末永く付き合っていくことは、会社経営するにあたってメリットが大きいです。
地域や銀行によってカラーも異なり、接し方も臨機応変で対応する必要がありますが、少なくとも今回取り上げた銀行が嫌うポイントは基本的なことであり、条件を問わず当てはまらないよう実践できるはずです。
また、プライベートに近い付き合いがあるのならば、普段の関わりの中でも「約束は守ること」「きちんとした金遣いをすること」を心がけましょう。
思いがけない小さな失敗が、その後に大きく影響してしまうこともあるのです。
プロパー融資とは
王道の資金調達方法と言えば「銀行融資」です。
メリットは、銀行という安定企業との取引きである点と、何より金利が低いという点でしょう。
銀行融資は大きく分けると「プロパー融資」と「信用保証付き融資」の2種類があり、俗に言う“金利が低く審査が厳しい”銀行の融資とは、前者のことを指します。
今回はその「プロパー融資」について解説します。
プロパー融資とは保証会社の保証を付けず、銀行と直の取引で行われる融資のことです。
万が一、融資先の倒産など事故が起きた場合「信用保証付き融資」であれば保証会社による補填で大部分を賄うことができますが、プロパー融資の場合は銀行がすべての損失を被ることになります。
銀行にとってはリスクの大きい融資なのです。
そのため、審査は銀行独自に設けられた厳しい基準で行われ、融資を成功させるのは一筋縄ではいかないものとなっています。
では、なぜ企業はわざわざ審査の厳しいプロパー融資をうけたがるのでしょうか?
プロパー融資のメリット
プロパー融資は審査が通る確証もなく、早急で確実に資金調達したい場合では都合が良いとは言い難いものです。
多数の必要書類の提出や予備対策も必要となります。
しかしそれでも多くの経営者がプロパー融資を受けたがるのには、相応のメリットがあるからなのです。
金利が低い
プロパー融資の一番の魅力は、金利が安くなる傾向にあることでしょう。
1%を切るケースもあり、特に額が大きくなっていくとこの恩恵は絶大なものになります。
融資を受けることができるのは厳しい審査をクリアした信用力の高い企業となるので、貸し倒れのリスクが少なく、その分金利を低くできるのです。
保証料がかからない
保証会社をつけないので、当然ながら保証料がかかりません。
低金利のうえ保証料もかからないので、トータルでのコストをだいぶ抑えることができます。
会社の信用が上がる
プロパー融資を受けたということは、銀行が信用できる会社であると認めた裏付けになります。
遅延することなく完済し、会社の業績も順調であれば、その後も高い確率で融資を受けることができるでしょう。 金利面でさらに有利な条件になることも期待できます。
中小企業は融資を受けることができるのか
低金利で資金を借りることができ、会社信用力も上がるとなれば誰もが利用したいと思うでしょう。
しかし現実は中小企業にとって狭き門になっています。
中小企業が銀行融資を申し込みにいくと、「信用保証付き融資」を提案されることがほとんどです。
プロパーを選択することすらできないかもしれません。
しかし信用保証付き融資は審査に時間がかかり、保証料も発生します。
そうなると銀行融資本来のメリットも薄れてしまうため、中小企業は手っ取り早く資金調達ができるファクタリングなどの手段に頼るケースが増えるのです。
だからと言って、絶対にプロパー融資を受けることができないわけではありません。
銀行が融資したくなるような事業計画や経営計画を持っているのであれば、説得力ある書類を作成しチャレンジしてみるべきです。
また、「信用保証付き融資」を使い、銀行からの信用を積み重ねていけばプロパーの門が開かれることも充分にありえます。
銀行と信用金庫の違い
銀行と信用金庫の違いを聞かれて皆さんは正確に答えられますか?
違いが分からずに答えられない人も少なくはないでしょう。今回はこの2つの金融機関を比較してみます。
結論から申し上げますと、 金融機関として利用するにあたって、銀行と信用金庫とでうけられるサービス内容自体に特別大きな違いはありません。
両者ともに「預金」「貸付」「為替」の3つの業務を行っており、明確は違いを答えにくいのも当然なほど似ています。
営業面においては、信用金庫は基本的に地域密着型なので全国展開していない場合が多いです。
ATMの数も銀行に比べて少なく、必ずいつでもどこでも利用できるような利便性の面では銀行に劣ります。
逆に、銀行のほとんどは全国展開しており、全国の各都市部に支店をかまえているケースが多いですが、地域密着型の信用金庫は都市部から離れた場所にも支店を置いていることが多く、人によっては窓口がより近くなります。
このように、それぞれ利便性の特徴に違いが見られます。
貸付金利や預金利息にも大きな違いはありません。
取り扱っている商品ラインナップも特別差異はなく、どちらでも同等の金融サービスを受けることができます。
具体的な違い
では何が違うのでしょうか?全く同じなら名称を分ける必要もないはずです。両者の大きな違いは「経営理念」にあります。主な相違点をまとめてみました。
設立目的
銀行 | 営利目的の株式会社。 国民大衆のために金融の円滑を図ることが設立目的ですが、最大の目的は利益を得ること。 |
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信用金庫 | 会員の相互扶助を目的とした非営利法人。 国民大衆のために金融の円滑化を図り、その貯蓄の増強、生活の安定に寄与することを目的としている。 |
基づく根拠法
銀行 | 銀行法 |
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信用金庫 | 信用金庫法 |
利益の還元
銀行 | 株主、社員へ還元 |
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信用金庫 | 地域に還元 |
一番大きな違いは「利益」についてでしょう。
会社を大きくするため、および株主と社員に還元する利益のために運営しているのが「銀行」で、利益を得ることを目的とせず、発生した利益も地域へ還元することを原則としているのが「信用金庫」です。
預金・融資の対象者
銀行は口座を持っている不特定多数の顧客を金融サービスの対象者としていますが、信用金庫は下記の会員資格を持つ者に対象を限っています。
- 営業地域内に住所または住居している者
- 営業地域内に事務所を持つ者、また勤務している者
- 勤労に従事している者
- 従業員300人以下および資本金9億円以下の事業者
信用金庫の一番の特徴は、地域密着型であることです。
また、法人の場合は従業員数と資本金に制限が設けられており、これは銀行ではあり得ない内容となっています。
これを見てもわかるように、信用金庫はそもそも大企業ではなく、中小企業向けの融資を行っているのです。
地域密着型かつ中小企業向けという信用金庫の特徴は、地元の中小企業経営者にとってはとても利用価値が高いものであると言えるでしょう。
信用金庫を利用するうえで意識しなくてはならないことは、引っ越しする予定や可能性があるのならば注意が必要であることです。
遠方の土地へ引っ越す場合、信用金庫法上の制限が生じるのです。
もしも心当たりがあるのであれば、申し込み前にしっかりと相談しておきましょう。
一方、銀行であれば日本国内だれでも利用することができます。
銀行と信用金庫とでは金融サービス面では大きな違いはないので、それぞれの特徴とメリット、また住んでいる(会社経営している)場所においての利便性を比較して選べばよいでしょう。