知っておくべき闇の部分
ファクタリングは優良な会社を選んで正しい手順を踏めば、非常に有効な資金調達法として心強い存在となってくれます。
しかし、お金に困っている状況で正常な判断ができなくなっている人をカモにするような悪い連中は、いつどこにでも存在します。
これはファクタリングだけに限った話ではありませんが、一見まともな会社を装った悪徳業者もいれば、単なる詐欺集団のような会社も存在するのが現実です。
ここでは、そのようなファクタリングにまつわる負の要素、悪徳業者や詐欺集団の存在や、利用するにあたって頭に入れておかなければならないリスク面などについてまとめています。
あらかじめこれらに関する予備知識を入れておくことで、格段に見抜ける力や危険を回避できる確率は向上するはずなので役立ててください。
闇金との関連性
15年ほど前までは一部の闇金も貸金業の届出を行い、繁華街の裏路地などに店舗を出して貸金業を行っていました。
しかし、2000年代中盤から取り締まりが強化され、店舗型の闇金はほとんど姿を消しました。
闇金は振り込め詐欺などを行う特殊詐欺や、ネットで集客するソフト闇金などあらゆる形に姿を変え、相変わらず存在し続けています。
その一部で、闇金がファクタリング業者として運営しているケースもあるのです。
取り締まり強化のほか、インターネットの情報が充実したことにより、闇金の手口や手法が広く知られるようになったのも、業界の潮流が変わったことに影響したようです。
ファクタリング会社の姿をした闇金は、ネット上で経営難に陥っている経営者を対象に集客し、違法な貸付を行っています。
このような悪徳業者に一度関わりを持ってしまうと、資金難でファクタリングを利用しようとした経営者の個人情報として、裏社会に流出してしまう可能性も高いので注意が必要です。
2種類の被害パターン
ファクタリング会社を装った闇金による被害パターンは、以下の2種類です。
- ファクタリングによる債権買取だと言って現金を振り込み、後から貸付だと言ってくる
- ファクタリングで法外な手数料やデメリットの説明をして、躊躇する問い合わせ客に「うちなら貸付でも対応できる」と提案してくる
このように、違法な貸付だと同意させた上で契約を結ぶケースと、お金を振り込んだ後に貸付だと言って脅してくるという2パターンです。
違法な貸付だと提示する場合でも、切羽詰まった経営者は利用してしまうことも多いようです。
もちろん借入後は通常の闇金と同じく、徹底的に搾り取りにきます。
闇金からの借入は法的に無効である以上、元本を含めて返済する義務は本来ありませんが、そのような正常な判断をさせないことも彼らにとっては容易いことです。
家族、従業員、取引先に闇金からお金を借りてトラブルになっていることがバレてしまえば、大きな問題に発展することは避けられません。
闇金は脅しのプロなので、そういった相手の弱点を突いてきます。
業者の逮捕事例
これまでにあった闇金業者の逮捕事例をまとめました。
ファクタリングに限らず、銀行やビジネスローンで借入できない経営者に「お金を貸す」と言い寄ってくる業者の大半は闇金です。
甘い話や貸付前の優しい対応に騙されないように注意しましょう。
逮捕事例を見ると、その悪質性がよく分かります。
全国初の検挙事例
2017年1月、貸金業法違反と出資法違反の疑いで東洋商事とグループ会社のMINORI元経営者、三浦和仁容疑者ら男8人が逮捕されました。
闇金を装ったファクタリング会社の逮捕事例は、これが全国初のことでした。
逮捕容疑は貸金業の登録をしていない中で2016年5~8月に、堺市と三重県鈴鹿市の会社経営者2人に40~50万円の貸し付けを行なった疑いです。
東洋商事グループは他にも約250社に対し、1億円以上の貸付をしていた疑いを持たれています。
三浦容疑者はファクタリングなので貸付行為ではない、と容疑を否認しています。
しかし、三浦容疑者は2003年7月にも闇金融運営で法定利息の50倍以上の金利を脅し取ったとして逮捕された前科を持っており、ファクタリングを装った闇金運営であることは明白だと言えるでしょう。
違法貸付と出資法違反
2017年3月に大阪府警生活経済課は、城南ファンディングの元経営者である天晶(あまあき)誠秀被告を、ファクタリングを装った闇金運営の疑いで逮捕しました。
さらに捜査が進み、2017年5月には「みかど企画」と「クレイキャピタル」の実質経営者2人(うち1名は天晶(あまあき)誠秀被告)と、両社の従業員5名の合計7名も逮捕されました。
逮捕容疑は2016年3~9月に無登録で貸金業を営み、滋賀県内の会社会長ら2人に現金計60万円を貸し付け、法定利息の40~48倍相当の利息計25万円を受領した疑い、とされています。
無届での貸金業法違反と出資法違反の疑いでも再逮捕されています。
綺麗なホームページで表向きファクタリング会社に見えても、契約書の内容が貸付になっていないかなど、チェックは必要です。
逮捕された業者の共通点
- 資本金の少ない小規模業者だった
- マンションの一室で運営していた
- 三浦被告と天晶被告は前科持ちだった
- 複数のグループ会社を運営していた
悪質業者は、悪評が広まった場合にすぐに会社を閉鎖して逃げる準備をしています。
そしてその後、すぐに名称を変えたサービスと法人名で、また同じ貸付行為を繰り返すのです。
東洋商事と城南ファンディング、みかど企画の3社については、代表者名をネット検索することで、他の運営会社情報や過去の逮捕履歴から悪質業者であることを判断できました。
いずれの会社もホームページは綺麗で、5%~といった安い手数料を提示していました。
しかし、実際には20~30%の手数料という、表示とはかけ離れた高い手数料を徴収していました。
詐欺事例
サービスを提供するファクタリング会社側だけではなく、利用する顧客側による詐欺も問題になっています。
契約当初から騙す目的であらかじめペーパーカンパニーを作り、売掛先とも共謀している場合もあれば、経営難の中でルール違反を認識しながら、結果的にファクタリング会社を欺く行為をしてしまうケースもあります。
利用者側が行う二重譲渡
代表的なのが二重譲渡です。
債権譲渡登記をしないファクタリング契約を結んだ場合、すでに売却したことになっているはずの売掛債権を、他のファクタリング会社に二重譲渡してしまうことが可能です。
当然ながら本来は1つしかない債権を2カ所に売り渡しているため、いずれかのファクタリング会社が騙されたことになります。
悪意を持ってやったとすれば、詐欺罪として刑事責任を追及されることになるほどの悪質な行為です。
「債権譲渡登記なし」という条件に拘る経営者がたまにいますが、ファクタリング会社から見れば二重譲渡を疑いたくなるところです。
万が一後から他の会社に債権譲渡登記をする契約をされた場合、二重譲渡の違法性は訴えることはできたとしても、登記をした会社に比べて債権者としての立場は弱くなります。
ファクタリング会社としては、そのような状況は避けたいと考えるのは当然のことです。
二重譲渡をしてもバレない?
ファクタリング会社2社に対して債権譲渡登記なしの条件で二重譲渡してしまえば、取引した2社ともに二重譲渡をしているか確認する手段がありません。
2社間ファクタリングの場合、売掛先から自社に入金があったら、そのお金を速やかにファクタリング会社へ支払う、というのが本来の流れです。
二重譲渡すると売掛金の入金だけでは2社への支払いはできませんが、他でなんとか工面して両方に返済をすれば、二重譲渡がバレないまま済ませることも理論上は可能と言えます。
実際にそういった淡い期待を抱いて二重譲渡に手を染める利用者もいるからこそ、ファクタリング会社も慎重になるのです。
支払いができずにバレてしまった場合は、刑事責任を追及されることになるでしょう。
架空取引による詐欺事例
ファクタリングは数千万円にも及ぶ高額な債権買取にも対応しています。
もちろん額が大きくなるだけ厳正な審査を行われますが、滞りなく利用している実績が付くと高額なファクタリングにも柔軟な対応をしてもらえるようになります。
こうした特性から、架空の会社を2つ作って掛け払いの取引を行い、最初は少額利用で実績を残し、折を見て高額な買取を持ち掛けて買取金を持ち逃げする、といった手の込んだ詐欺事件も発生しています。
不渡りのリスク
売掛金が発生する掛け取引には、売掛先が倒産したり経営難で支払い遅延や貸倒しを起こすような不渡りのリスクがあります。
ファクタリングは一般的に償還請求権なしで結ばれる契約なので、売掛先が不渡りになっても利用者側に弁済義務は発生しません。
ただしこれはあくまで一般論であり、ファクタリング会社側が自社のリスクを軽減するために契約に償還請求権を特約で付けるケースもあります。
明らかに相場より安い手数料を提示されたり、他社で断られた中で好条件の買取額を提示された時は、償還請求権の有無をしっかり確認しておいた方がよいでしょう。
償還請求権なしで行ったファクタリング契約において、売掛先が不渡りになってしまった場合、ファクタリング会社が損失を被ることになります。
当然ファクタリング会社から売掛先に取り立てを行うが、大半の場合回収できず、大幅に減額した条件で債権買取会社などに売却することになります。
ファクタリングの手数料は高いと思われるかもしれませんが、ファクタリング会社が利用企業と売掛先双方の倒産や、債務超過によって不渡りを出すリスクを抱えていることを加味すれば、それも仕方のないことだと理解しなくてはいけません。
信用情報への影響
ファクタリングは法的にも認められている資金調達法で、利用しても信用情報には何も影響は出ません。
ノンリコース契約という特性から、売掛先が万が一倒産しても弁済義務が発生することもなく、安心して利用できるというメリットもあります。
債権譲渡登記のリスク
2社間ファクタリングでは、債権譲渡登記を求められるのが一般的な傾向です。
それは利用者が倒産したり、入金されても支払いをしなかった場合に、ファクタリング会社が売掛債権に対しての債権者であることを明確にするためです。
債権譲渡登記は二重譲渡の防止も含め、ファクタリング会社側にとってのリスクヘッジとなるのです。
では、利用者としては債権譲渡登記によるデメリットやリスクはあるのでしょうか?
まず、その登記が売掛先(取引先)にバレることはないと言い切れます。
法人の商業登記情報を開示されても、債権譲渡登記の有無は確認できません。
厳密には、債権譲渡登記を第三者が閲覧することも可能ですが、どこの売掛債権を登記しているかまではわかりません。
そもそも債権譲渡登記情報を取引先が閲覧すること自体が考えにくい話ですが、万一閲覧されても具体的にどの債権を譲渡したかまではわからないのです。
銀行融資やビジネスローンの審査を受ける場合は、金融機関ごとの対応になりますが、基本的に債権譲渡登記の情報は確認していません。
あくまでも原則の話ですが、ファクタリングを利用したことでこれらの審査が不利になることはないでしょう。